入社後3ヶ月の現場実習を経て、「調達部」へ配属になりました。調達とは、モノをつくるため必要な材料や資材を手配する役割の部署です。手配するといっても、単純に注文をかけるだけではありません。いつまでに、どの会社に、何を、どれだけ、いくらで作ってもらうのか。価格折衝、納期管理、生産準備などすべてを管理する仕事です。製品や技術を深く理解したうえで、協力会社の代表者との交渉力や提案力が求められます。
度胸、そして緊急事態にも冷静沈着、かつ迅速に対応するチカラ。
これが、調達の任務について一番身についたことかもしれません。モノづくりには絶対に欠かせない材料、資材を期限内に調達する役目。しかも、その量や原価は、会社の利益そのものを左右する。年間におよそ400億円を動かす部署です。任された責任も重い。トラブル無く進めばいいのですが、思った通りにいかないのがこの仕事のタイヘ‥‥いや面白いところです。
とくに、調達部でも私が担当する「部品調達室」は、製品を協力会社で製作して客先へ納品するまですべての工程に関わります。
「(軸受資材の)ワッシャを3ヶ月後までに1000個お願いしたいんですが。‥‥生産設備は空いていますか。図面はFAXしますね。‥‥じゃあいくらでお願いできます?‥‥そこをなんとか!この部品なら、工数をもう少し減らせませんか‥‥ええ、納期は少しずらせるように営業部へ掛けあってみます。」
商談相手は、数十歳年上の取引先の社長や役員の方々。私が「大豊工業の代表」として価格交渉します。度胸がいると思いませんか?もちろん、一方的ではなく互いが有益になるように譲歩も大切。日頃から困り事に応えていくのも交渉のコツです。良い関係づくりが、結果的な利益に繋がるのです。
「ごめんなさい。実は、生産能力が追いつかず、この部品は作れません。」
いつも懇意にしていただいている協力会社から断りの電話が入ったのが、納期から3ヶ月前のことでした。
「どうしよう!」
状況を考えると、呆然としている場合ではありませんでした。ワッシャにメッキを付ける製品で、通常より技術力が必要な部品。すぐに、コストと生産技術が見合う会社を探さなければなりません。とにかく、過去取引があった会社も併せて数十社へ連絡をとりました。お願いしたい部品の図面を送り、技術力とコストと生産能力を聞きながら必死で交渉。時間は過ぎていくばかりで、焦る一方でした。
そして取引先を探すことかれこれ1ヶ月。ようやく1社、引き受けてくれる企業が現れたのです。コストも合格。求める品質が出してもらえるか?という品質審査もクリアし、無事交渉が成立。
いまは、一緒になって生産準備に取りかかっています。今の設備で正確な寸法がでるか、納期に間に合わせるだけ設備を稼働できるか、トライを繰り返して問題解消。最後まできっちり見届けるのが私の役目です。
協力会社を自分でみつけ、価格交渉し、利益をあげ、調達した製品を生産ラインへ納品する。これが、調達本来のシゴトであり、数百億を動かす醍醐味。その刺激と面白さを毎日かみしめています。
「自分で考えてみること」。それは、社会人になって常に問われることです。この場合、どうしたらいいのか。自分は何がしたいのか。責任の大きいシゴトを任せられるほど、自分で考えて判断するチカラは必要になってきます。就職活動でも同じだと私は思います。就職先を選ぶために、幅広い情報をつかんで、自分の考えをもう一度洗い直す。それが後悔しない就職の秘訣ではないでしょうか。